第九話
1.生贄─知識と拒絶と失望
朝、呼び出しを食らった。
夕方、最短で仕事を切り上げて部屋を訪ねに来いと宣告された。
部屋に行くと、イスに座って待機していた鬼灯くんが無言で一枚の紙を差し出してきた。
後ろ手にドアを閉めてから、それを受けとりにいく。
間近で確認しなくてもそれが私にとって都合の悪いものだとわかっていた。
そっとそれを受け取って目を凝らすと、雑誌の切り抜きなんだとわかる。
見覚えがある文章だった。つい昨日みたばかりだなあ奇遇だなあと現実逃避してみたけど虚しくなるだけで、すぐにやめた。
「なんで、知っているんでしょう」
立ちつくし、手元に視線を落としたまま顔を上げない私に、鬼灯くんは座ったまま静かに声をかけた。
「まるで先を見通す目を持ってるみたいですね」
「…」
「こういうとき、勘がいいとか直観力とかいうことがありますけど、でもこれはそういうものとは違いますよね」
疑問形で尋ねるけど、もう鬼灯くんの中で考えは固まってるはず。
私の口を通してきちんと自供させたいだけなのだ。
実は私神様なんですとか言っちゃおうかな…なんて内心で自棄になっていた。
この状況から逃れるためには変な小細工なんてきかなくて、こんなスケールの大きいものでしか言い逃れできない。
先見する能力が備わっているんです、特別な存在なんですとか高らかに宣言してしまおうかと思ったけど、そんな綱渡りをする度胸はなく。
「…それは」
「それは?」
「…」
乾いた唇がこぼすのは要領の得ないもごもごとした言葉ばかりで、言い訳も弁解も誤魔化しも謝罪も何一つ出て来ない。
「聞きかたを変えましょうか。なんで作ったんですか。なぜ想像できたんですか」
「…」
「先見なんて、神でもないんだから」
「……」
先手を打たれてしまった。もうこの手の言い訳やごまかしは聞かない。
する度胸もなかったけど、でも本当のことを言うか黙秘するかのどちらかないんだと改めて突きつけられる。
だとしたら沈黙することしかできない。本当のことを今更告白する度胸もない。
出会ったばかりの小さい頃に本当のことを言っておけばよかったなあ、と今さらどうしようもない後悔をした。
過去のことを負い目に思ってはないから、話すことは構わない、それ自体は苦痛じゃない。
途中から時差酔いという病状が出てきてしまったので意図的に黙秘していたけど、それがなければ何でもない話でもするように話せたはず。
今話せないのは、あれから時間が経ち過ぎたからだ。
時代を先取って売っていたことも白状するのは抵抗があるし、何より長い時間を「ただの苗字名前」として過ごしすぎていて、「元■■■■だった苗字名前」と訂正することがなんだか怖かった。
存在が塗り替えられるような、急に足場がなくなって落下していくみたいな恐怖があった。
恐怖に立ちすくんで停滞したままで居ることを許さず、淡々と暴き出す。
「今回のことは別にいいんですよ。同時期に示し合せたでもなく同じような発想が生まれて、同じような出来事が連動するように起こって、そういうのって別に珍しくない」
「…」
「でも貴女は何度そういう出来事を起こしてきたんでしょうね」
その通りだ。偶然ではなくて、意図的に引き起こしてきたのだ。生きるただと正当化して、それを後悔していない。ただ当時から罪悪感は抱いていていたし、今になって責め立てられたら当然辛く感じる。
俯いて口を噤んでいるだけで罪を認めているのも同然だったけど、それでもそれだけでは済ませてくなれい。
「訳を話すことができますか。…その偶然に明確な"訳"が存在するんですか?」
──存在する。時間はかかるけど、長くなるけど、自分できちんと道筋立てて一から説明ことも出来る。荒唐無稽な話だけど、話せば信じてもらえることだとわかってる。
全部頭でわかっているし、言うべきことだ、言った方がいいことなんだとは思う。
けれど。
「…いやだ」
心は嫌だと訴え拒絶する。
そこに理屈はなくて、ただ不快感や漠然とした恐怖だけが渦巻いていて、簡単に言うならただのダダこねと一緒だった。
知られたくない。時代が追いついた今私が隠す必要はない。けれど怖いから、後ろめたいから嫌だった。言いたくなんてなかった。
「なぜ」
「…い、言いたくない」
「…またそれですか」
子供のような一点張りで、子供よりも劣っているかもしれない下手な言い訳。
みっともないとわかっていてもそれしか出来ない。
「呆れられても、それでもいやだ」
私にだって、折りたくない、曲げたくないものだってある。
自分を押し殺してでもやり遂げなければいけないことはある、我慢を強いられる時だってある。
けれど限界というものがあって、その一線を越えた時にムリも我慢もきかなくなる。
どんな理由があってでも自分を折ることが出来ない時がある。
それが今だというなら、なりふり構っていられない、細かに巧妙に繕うことなんて出来るはずがなかった。
「…わかりました。じゃあこのことについてはいったん保留にします。その代わりに違うことを聞きます」
私の手から雑誌の切り抜きを抜きとって、机の上に置いた。
今のお互いの体勢的に私は見おろしている側で、見下ろされているのはあちらだというのに、私の方が上の方から圧をかけられているかのような息苦しさがあった。
「あなたの不調の原因って何ですか。病は気からなんでしょう」
「……」
「これもまだ言いたくないままなんですね」
無言の裏にある、声にならないものを探られているかのようだった。
「じゃあ、あなたが今に至るまで成長しなかった理由は。ああいうのは精神的なものに左右される。途中から気が変わったというなら、その理由は?」
「……」
「あれもこれも嫌だというなら本当に子供と変わりがない」
責められている。咎められている。怒られている。言い方は色々あるけど、私にとっては辛いものばかりだった。
これが楽しいものなはずがないし、飴と鞭を使うみたいに最後には慰めてくれる訳ではないだろう。ただ淡々と聞き出して、淡々と言わせるだけだ。
聞きたいから、聞く必要があるから聞く。情状酌量の余地はなし。
目を瞑ってきたけど、もう限界、目に余るようになった。
だから聞く。けれど複雑な心境を慮る気はない。相手が子供のようだからと言って、甘くして諭してくれる訳ではない。鬼灯くんは優しいけど、厳しいから手を緩めてはくれない。
「…言えない、言いたくない理由はあるんですよね」
厳しい。けれど非道ではないし冷静だから、怒鳴りつけてまで暴き立てることはなかった。
でもじわじわと追いつめられる方が苦しいんじゃないかなと時々思う。
嫌だ、怖いといった感情ばかりが先行しているとは言え、言いにくい複雑な事情というのも存在するので、無言で首肯した。
口を噤むばかりで何も意志表明してこなかった私がようやく頷いたのをみて、少し考えてから続きを話す。
「あなたが言いたがらないことは昔からいくつかあったけど、それらにはもしかして全て共通点がある、連動している」
言いながら確かめているようだった。頷く。
「だとしたら、複雑なこと取り払ったら、言いたくないことは根源の所にある一つだけ」
病は気からで、成長も気からで、じゃあ今回のことはなんなんだろうと繋げて考えている。
もう一度頷いた。一つだというならとてもシンプルなことで、なぜそのたった一つのことを説明できないのだと目が攻め立てている。
けれど、結局言えないのはその「気」のせいだ。
複雑なアレコレを取り払ったら単純な話で、ただ自分の気持ちが拒んでいるだけ。
「…がっかりされたくない」
シンプルに言うと。
「…本当に子供だ」
心底呆れている様子だった。
「それは理由でも信念でもなんでもなくて、呆れられたくないだけの子供の癇癪じゃないですか」
「…」
沈黙が肯定だとここまで表すのもめずらしい光景だ。
黙っているだけで物語る。喋る方が優秀なばかりに黙っていてもどんどん展開していく。
いつかのシーン、立場を逆転した状態で繰り返しているなと思った。子供だなと呆れたのは私の方で、今度は私が鬼灯くんに呆れられている。なんだか滑稽だった。
「…酷い顔してますね」
「…誰のせい…」
「自分のまいた種でしょう」
「そうだけど、そうじゃない」
ぐっと唇を噛んでようやく言い訳をした。それこそ子供みたいでみっともないけど、それさえ言えなかった時よりは随分マシだった。冷えた手の痺れが取れてじわじわと体温が戻ってきたようだった。
体温が戻ると頭も回って、呼吸も少し楽になって、もう少し冷静に考えて話せるようだった。
「今日はもう休んだ方がいいでしょうね」
「…」
「隙をみてまた聞きますけど」
「そういうこと目の前で言わなくても…」
萎縮しきったまま、俯きながら指先を弄ぶ。
お叱りは今回だけではない、これでは済まされないぞと脅しをかけられたも同然だ。
今日のところはこれで解放される…とホッとする隙もなかった。
でもとりあえず今日は帰っていいんだよねとちらりと視線をやると。
「私は問題だと思ったし、聞き出す必要があると思ったし、興味もあったし、単純に腹も立ったから聞いてますけど、」
最後に何もかも繕わない続きを一つだけ。
「あなたは言わないままで楽でいられても、だからと言って言わないことさえも苦しかったとしても。あなたのその罪悪感にも劣らないくらい、教えられない私もきっともどかしくて苦しいですよ」
これは決して鬼灯くんの優しさから出た言葉ではなかったけど、問い詰めるだけではなく、初めて子供を諭すように丁寧に紡いでくれているなと感じた。
そしてそのまま私の背を押して送り出した。夕陽が落ちて空は藍に染められかけていた。
1.生贄─知識と拒絶と失望
朝、呼び出しを食らった。
夕方、最短で仕事を切り上げて部屋を訪ねに来いと宣告された。
部屋に行くと、イスに座って待機していた鬼灯くんが無言で一枚の紙を差し出してきた。
後ろ手にドアを閉めてから、それを受けとりにいく。
間近で確認しなくてもそれが私にとって都合の悪いものだとわかっていた。
そっとそれを受け取って目を凝らすと、雑誌の切り抜きなんだとわかる。
見覚えがある文章だった。つい昨日みたばかりだなあ奇遇だなあと現実逃避してみたけど虚しくなるだけで、すぐにやめた。
「なんで、知っているんでしょう」
立ちつくし、手元に視線を落としたまま顔を上げない私に、鬼灯くんは座ったまま静かに声をかけた。
「まるで先を見通す目を持ってるみたいですね」
「…」
「こういうとき、勘がいいとか直観力とかいうことがありますけど、でもこれはそういうものとは違いますよね」
疑問形で尋ねるけど、もう鬼灯くんの中で考えは固まってるはず。
私の口を通してきちんと自供させたいだけなのだ。
実は私神様なんですとか言っちゃおうかな…なんて内心で自棄になっていた。
この状況から逃れるためには変な小細工なんてきかなくて、こんなスケールの大きいものでしか言い逃れできない。
先見する能力が備わっているんです、特別な存在なんですとか高らかに宣言してしまおうかと思ったけど、そんな綱渡りをする度胸はなく。
「…それは」
「それは?」
「…」
乾いた唇がこぼすのは要領の得ないもごもごとした言葉ばかりで、言い訳も弁解も誤魔化しも謝罪も何一つ出て来ない。
「聞きかたを変えましょうか。なんで作ったんですか。なぜ想像できたんですか」
「…」
「先見なんて、神でもないんだから」
「……」
先手を打たれてしまった。もうこの手の言い訳やごまかしは聞かない。
する度胸もなかったけど、でも本当のことを言うか黙秘するかのどちらかないんだと改めて突きつけられる。
だとしたら沈黙することしかできない。本当のことを今更告白する度胸もない。
出会ったばかりの小さい頃に本当のことを言っておけばよかったなあ、と今さらどうしようもない後悔をした。
過去のことを負い目に思ってはないから、話すことは構わない、それ自体は苦痛じゃない。
途中から時差酔いという病状が出てきてしまったので意図的に黙秘していたけど、それがなければ何でもない話でもするように話せたはず。
今話せないのは、あれから時間が経ち過ぎたからだ。
時代を先取って売っていたことも白状するのは抵抗があるし、何より長い時間を「ただの苗字名前」として過ごしすぎていて、「元■■■■だった苗字名前」と訂正することがなんだか怖かった。
存在が塗り替えられるような、急に足場がなくなって落下していくみたいな恐怖があった。
恐怖に立ちすくんで停滞したままで居ることを許さず、淡々と暴き出す。
「今回のことは別にいいんですよ。同時期に示し合せたでもなく同じような発想が生まれて、同じような出来事が連動するように起こって、そういうのって別に珍しくない」
「…」
「でも貴女は何度そういう出来事を起こしてきたんでしょうね」
その通りだ。偶然ではなくて、意図的に引き起こしてきたのだ。生きるただと正当化して、それを後悔していない。ただ当時から罪悪感は抱いていていたし、今になって責め立てられたら当然辛く感じる。
俯いて口を噤んでいるだけで罪を認めているのも同然だったけど、それでもそれだけでは済ませてくなれい。
「訳を話すことができますか。…その偶然に明確な"訳"が存在するんですか?」
──存在する。時間はかかるけど、長くなるけど、自分できちんと道筋立てて一から説明ことも出来る。荒唐無稽な話だけど、話せば信じてもらえることだとわかってる。
全部頭でわかっているし、言うべきことだ、言った方がいいことなんだとは思う。
けれど。
「…いやだ」
心は嫌だと訴え拒絶する。
そこに理屈はなくて、ただ不快感や漠然とした恐怖だけが渦巻いていて、簡単に言うならただのダダこねと一緒だった。
知られたくない。時代が追いついた今私が隠す必要はない。けれど怖いから、後ろめたいから嫌だった。言いたくなんてなかった。
「なぜ」
「…い、言いたくない」
「…またそれですか」
子供のような一点張りで、子供よりも劣っているかもしれない下手な言い訳。
みっともないとわかっていてもそれしか出来ない。
「呆れられても、それでもいやだ」
私にだって、折りたくない、曲げたくないものだってある。
自分を押し殺してでもやり遂げなければいけないことはある、我慢を強いられる時だってある。
けれど限界というものがあって、その一線を越えた時にムリも我慢もきかなくなる。
どんな理由があってでも自分を折ることが出来ない時がある。
それが今だというなら、なりふり構っていられない、細かに巧妙に繕うことなんて出来るはずがなかった。
「…わかりました。じゃあこのことについてはいったん保留にします。その代わりに違うことを聞きます」
私の手から雑誌の切り抜きを抜きとって、机の上に置いた。
今のお互いの体勢的に私は見おろしている側で、見下ろされているのはあちらだというのに、私の方が上の方から圧をかけられているかのような息苦しさがあった。
「あなたの不調の原因って何ですか。病は気からなんでしょう」
「……」
「これもまだ言いたくないままなんですね」
無言の裏にある、声にならないものを探られているかのようだった。
「じゃあ、あなたが今に至るまで成長しなかった理由は。ああいうのは精神的なものに左右される。途中から気が変わったというなら、その理由は?」
「……」
「あれもこれも嫌だというなら本当に子供と変わりがない」
責められている。咎められている。怒られている。言い方は色々あるけど、私にとっては辛いものばかりだった。
これが楽しいものなはずがないし、飴と鞭を使うみたいに最後には慰めてくれる訳ではないだろう。ただ淡々と聞き出して、淡々と言わせるだけだ。
聞きたいから、聞く必要があるから聞く。情状酌量の余地はなし。
目を瞑ってきたけど、もう限界、目に余るようになった。
だから聞く。けれど複雑な心境を慮る気はない。相手が子供のようだからと言って、甘くして諭してくれる訳ではない。鬼灯くんは優しいけど、厳しいから手を緩めてはくれない。
「…言えない、言いたくない理由はあるんですよね」
厳しい。けれど非道ではないし冷静だから、怒鳴りつけてまで暴き立てることはなかった。
でもじわじわと追いつめられる方が苦しいんじゃないかなと時々思う。
嫌だ、怖いといった感情ばかりが先行しているとは言え、言いにくい複雑な事情というのも存在するので、無言で首肯した。
口を噤むばかりで何も意志表明してこなかった私がようやく頷いたのをみて、少し考えてから続きを話す。
「あなたが言いたがらないことは昔からいくつかあったけど、それらにはもしかして全て共通点がある、連動している」
言いながら確かめているようだった。頷く。
「だとしたら、複雑なこと取り払ったら、言いたくないことは根源の所にある一つだけ」
病は気からで、成長も気からで、じゃあ今回のことはなんなんだろうと繋げて考えている。
もう一度頷いた。一つだというならとてもシンプルなことで、なぜそのたった一つのことを説明できないのだと目が攻め立てている。
けれど、結局言えないのはその「気」のせいだ。
複雑なアレコレを取り払ったら単純な話で、ただ自分の気持ちが拒んでいるだけ。
「…がっかりされたくない」
シンプルに言うと。
「…本当に子供だ」
心底呆れている様子だった。
「それは理由でも信念でもなんでもなくて、呆れられたくないだけの子供の癇癪じゃないですか」
「…」
沈黙が肯定だとここまで表すのもめずらしい光景だ。
黙っているだけで物語る。喋る方が優秀なばかりに黙っていてもどんどん展開していく。
いつかのシーン、立場を逆転した状態で繰り返しているなと思った。子供だなと呆れたのは私の方で、今度は私が鬼灯くんに呆れられている。なんだか滑稽だった。
「…酷い顔してますね」
「…誰のせい…」
「自分のまいた種でしょう」
「そうだけど、そうじゃない」
ぐっと唇を噛んでようやく言い訳をした。それこそ子供みたいでみっともないけど、それさえ言えなかった時よりは随分マシだった。冷えた手の痺れが取れてじわじわと体温が戻ってきたようだった。
体温が戻ると頭も回って、呼吸も少し楽になって、もう少し冷静に考えて話せるようだった。
「今日はもう休んだ方がいいでしょうね」
「…」
「隙をみてまた聞きますけど」
「そういうこと目の前で言わなくても…」
萎縮しきったまま、俯きながら指先を弄ぶ。
お叱りは今回だけではない、これでは済まされないぞと脅しをかけられたも同然だ。
今日のところはこれで解放される…とホッとする隙もなかった。
でもとりあえず今日は帰っていいんだよねとちらりと視線をやると。
「私は問題だと思ったし、聞き出す必要があると思ったし、興味もあったし、単純に腹も立ったから聞いてますけど、」
最後に何もかも繕わない続きを一つだけ。
「あなたは言わないままで楽でいられても、だからと言って言わないことさえも苦しかったとしても。あなたのその罪悪感にも劣らないくらい、教えられない私もきっともどかしくて苦しいですよ」
これは決して鬼灯くんの優しさから出た言葉ではなかったけど、問い詰めるだけではなく、初めて子供を諭すように丁寧に紡いでくれているなと感じた。
そしてそのまま私の背を押して送り出した。夕陽が落ちて空は藍に染められかけていた。