第八話
1.初対面脅かしと仲間集め

「チャッキィ!!今のはなんなの!!?少しも怖くない!!」
「なんだよ!!一生懸命やっただろ!!?」
「一生懸命やったで褒められるのは幼稚園児だけの特権なの!!」
「大人の頑張りを認めろォォ!!」
「東京は砂漠なんだよぉ!!!オアシスはない物と思え!!」
「うわぁあああ心が乾いていくううう!!!」
「いい年した男と16歳が喚くな喧嘩すんな!!!」


ていうか16歳の女が大人の男をいじめるな。チャッキイは水が欲しいと泣いていた。
トーキョーって何と問いかけても聞く耳を持たない。
今日も屋敷は賑やかだった。
連日訪れた肝試しに来た学生共と、酔っ払った大人達を脅かし尽くし、
反省会を開く。どの辺りがダサかったか、ひ弱だったか、腰抜けだったか、お化けとしてなっていなかったか。生者に勝つためには。

どうも廃墟負けしているというか。私達オバケに怯えているというより、雰囲気で恐怖は最高潮になっていて、オバケたる私達はオマケでしかないようだった。


「どうしてかしら」
「やっぱり主がいけないんじゃないですか」
「はあ!!!!?なんでよ」
「いや13歳の美人だから」
「えっ」


美人と言われて言葉が詰まったけど、子供だから舐められているのだと言われていると気が付き睨みつける。
そんな中、沈黙を貫いていたあの子が言った。


「いやだって怖くないもん」
「…は?」
「…あ?」
「バアッ!て出て行ってワアッ!!て驚いて逃げられるの繰り返しじゃん」


こっち見てもないし、容姿とかあんま関係なくない?と言ってる。
確かにそうだ。大きな音がしただけでふつう驚くし、反射で逃げる。
考えてみれば当然なことだけど、盲目になっていたようで気がつかなかった。は案外冷静に見ていたようだ。少し悔しくなり、そして同時に疑問が浮かぶ。


「…なんで言わなかったのよ」
「いや二人共真面目にやってるから、なんか熱心になる理由があるんだろーなーって」



聞けば日本の"ホラー"はもっと違う方向に特化しているのだという。
文化の違う彼女は私達のやり方を一人冷めた目で見ていたという訳だ。
批難の目を向けると、勢いよく立ち上がり大きな声でわめいた。


「二人共だってアメリカンで通じ合ってて私を孤独にするくせに!!!」
「なに?」
「アメリカン?」
「地元ネタで盛り上がんなってことだよ!!!疎外感半端ないんだよ!!!!私に共通言語をよこせ!!!!」
「なに言ってんのこいつ…」


チャッキィがしらけた目をしていた。
付き合いが長い分なんとなくは言いたいことが分かった。


「…そうはいっても、私達に共通点とかある?」
「ないね」
「言い切るくらいなら馬鹿みたいに喚くな!!!」
「馬鹿って言う必要あったか今の!!!?」


共通の趣味の話題で盛り上がるとか、そういう事がしたいんだろうと思い問いかけるも、言いだしっぺはスッパリと真顔で首を振った。


「スカーレット、13歳。特技は…だいたいなんでも出来たわ」
16歳。特技は料理する時必ず血を見ること」
「チャッキィ。酒も煙草ももう合法。霊感がある事以外特別な物は持ってない」


シーン。そんな擬音が浮かんでいそうだった。
改めて自己紹介したものの、なんてひどい。


「名家の生まれで美人でコミュ力あって…主がチートすぎて全然親近感持てない」
「チャッキイのハンカチの刺繍には親近感持ったけど、他は特に」
「私はの料理下手話嫌いだわ。なんか鳥肌立つ」


見事にかみ合わない。各々歯に衣を着せることない。
社交辞令という言葉を知らず、烏合の衆は各々好き勝手にやっていた。
私はテイラー家の教育の甲斐あってか、所謂世渡り上手ってやつなんだろうけど、こんな所でまで優雅な営業する気はなかったのだ。


2022.8.21

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