気が付くことと望まないこと
1.阪神共和国
あの後、小狼たちはこの阪神共和国でお世話になったらしい正義くんという人に会いに行った。
私は全然接点が無いし、辛うじて阪神城にぶら下がってる姿を見た程度だ。
だから、「一緒に行きませんか?」と小狼に誘われたけど、嵐さんと空汰さんの下宿屋に留まった。
…小狼、少し寂しそうな顔してた。…やっぱり付き合い長いし、わかるのかな。
「…さん」
「おー、ちゃん、そろそろご飯の時間やで」
「…嵐さん、空汰さん」
小狼たちは正義くんたちとお好み焼きを食べに行っていて、少し羨ましいなぁと腹の虫を鳴らせていれば、嵐さんと空汰さんが湯気の立つお皿の乗ったトレーを持ってきた。
差し出されたそれにはお好み焼きが乗っていて、懐かしいソースの香りに少し視界が歪んだ。
…ああ、帰りたいなぁ。私、あそこに帰りたい。私の居場所だったあそこに帰りたい。
でもそれを私は一度も口にしたことがない。一種の願掛けと、それと…
「小狼、えらい切なそうな顔しとったな」
「……はい。幼馴染、です、から…」
…言葉にしてはいけない。それを口にしてしまえば、望んでしまえば、
色々なものに変化が現れてしまう。例えば他人の行動、例えば他人の言動、例えば天気。例えば表情…例えば
「さんは、怖いんですね」
「……口にしてしまえば…変わって、しまう…私が望めば…」
未来、とか。
だから嫌なの。だから望みたくないの。だから望みを生み出す自分の心が消えてしまえと押さえつけたから、玖楼国ではとても静かに無感情で無表情で、最初は色んな人に心配されたけど。
最終的にはぼんやりだなぁと笑われる程度で済まされて…でもみんな多分、気がついてた。
…外側は変えられてもやっぱり内側は無理だった。内側は、胸のここは、とてもとても大切なところ。
カラダの記憶と心の記憶は、その人の核心。
空汰さんも嵐さんも、小狼たちに一線引いて、関わらないようにしてるのがわかるみたいだ。それが一番の得策だと思った。未来のために。これからのために。彼らのために。全ての、ために。
「そんでも、ちゃんと望まんとあかんで」
「…兎様…」
「あんさんは人間や。人間は内側を押さえつけてしもたら、壊れてまう」
「…でも…私は…」
「誰も特別な人間なんておらん。平等平等。…例え、世界に不平等があったとしてもな。本当は世界はとてもシンプルやで。望みがあるから言葉にする。言葉で、行動で縁が結ばれる。人にとってとても大切なことや」
「……ほんとに、そう、かな…」
「ああ、そうやで!だから胸張って、お仲間たちに言ってやり!」
シュン、っと空気を切るような音がしたと思えば、肩にずっしりとした重み。
もうこの不思議現象にも慣れた。雪の兎のようなつぶらな瞳をした外観、
でもモフモフの兎様。どうやらこれが私の巧断。
この国で私を守ってくれている存在。
少しだけ、心が楽になった。ありがとう、と小さくお礼を言うと、兎様はぴょこりと耳を動かして嬉しそうに返事をしたようだった。
…けど。なんだか少しこの場が静か?
…そうだ、いつも賑やかな空汰さんが無言なんだ。この部屋にちゃんといるのに。
頂いたお好み焼きをもぐもぐと口に含みながらちらりと視線を寄越せば、
空汰さんは何故か下を向いて震えていて、そして…
「な、なんやその巧断ー!!?」
「…ふぁい…?」
「そんな流暢に実体化して喋る巧断そうそういないで!特級か?いや特級っつーより……」
「うしゃぎしゃふぁふぁ…?」
がばりと兎様に飛びつくように顔を上げた空汰さん。が、兎様はぴょこんと跳ねて回避。
お好み焼きがあと一口。よく噛んでからごくりと飲み込んだ。ああ、至福。美味しかったなあ。
空汰さんと追いかけっこになってる兎様を見つめながらお茶を飲んでいれば、兎様はこちらに帰ってきて肩に乗って、言った。
「最後にあんさんが好きなとこ、行ったろ」
「…最、後…?」
「ああ、最後や」
少し寂しそうな目をした兎様は小さく呟いた。
…そうか、さくらの羽根も手に入れて、私の羽根も手に入った。ここに留まる理由はない…
用事は済んで、早く次の世界に行かなくてはならなくて、
…兎様はずっと私の探しものに付き合ってくれて、手伝ってくれて…
「…うん…」
私はふわりと暖かな風に包まれて、気がついたら窓から飛び出して、空へと飛び上がってた。
いつものように足元に小さな羽根が生えて、某メルヒェン魔女っ子のように跳(ジャンプ)するのかと思ったけど…
背中に羽根が生えてる。地面につま先をつけなくてもいい。空に、飛んでる。
…飛(フライ)だ。杖もない、最終形態。
まるで私の望みを具現化したみたいな力だ。戦う力はなくてもいい、ただ…
「…綺麗…だね」
「今日はよく晴れてるなぁ。雲ひとつないしな」
「…空が、…近い…」
「…せやな」
「…私、…わたし…あたし、本当は、空に行きたかったの…空の綺麗な…一番、綺麗な、ところ…でも、多分」
出来ないから。
兎様は返事の代わりに頬に擦り寄ってくれた。巧断も暖かいのだなぁと少しだけ安心感を感じた。
暖かい。生きてるものの感覚。兎様は巧断だ。だけど、とても大きな命の波を感じる。
波打つ波紋はとても大きく広がって、広がって、止まることなく…壮大な
それを感じてやっぱり空汰さんが言っていたように、兎様が自称していたように。
凄い巧断なのかもしれないと思った。街でみかけた巧断よりとても広がりが大きいから。
「…あり、がと…兎様」
「ああ」
「…また、あなたに、逢え、ますか…?」
「あんさんが…が望むのなら」
「…うん…」
ぎゅ、っと空高く、阪神城よりも近いところに浮かびながら兎様を抱きしめた。
暫くそうしてたんだろう。
気がつくと、下の方から「おーいー」と男の人の声が聞えた。
そこにはファイさんがいた。黒鋼さんも視線をこちらにやってる。
小狼ははらはらとした顔でこちらを見てる。…本当に過保護だ。
だから私たちは守られてる。さくらはお転婆だからそんなものに縛られない、自由奔放な、とても綺麗な芯の通った子に育ったけど、私は…
「言ってやり」
兎様の声が聞えた瞬間、私はゆっくりゆっくり降下していった。
兎様の自動運転だ。巧断って多分、人の意思で動かせるものだと思うんだけど…
やっぱりそこは兎様は特別ってことかな
…私になんで、兎様は惹かれたんだろう
いつか逢えたら、また聞いてみたい
「姫!大丈夫ですか…?」
「…小狼、…敬語。あと、…姫じゃ、ない…」
「…はい。…うん。…いきなりあんなに高いところに居るから驚いた」
「…そっか。心配、してくれた、んだね…」
そう言ってみると小狼はとても驚いた顔をしている。
多分、今までそんなこと言わなかったから。
小狼たちの気持ちがわからないから無茶をするのだと思われていたと思う。
でも知ってた。本当にみんなが心配してくれていたこと。
それでも素直になりたくなかった。負い目を感じてた。
けど、兎様は言ってた。
私の、望み
本当の気持ち
「…いつも、…いつも…ありがとう…」
笑った。ありがとう、って言った。私の本当の望みはまだ口にできない。勇気がないから。踏み出せないから。でも、この言葉なら言えるから。
小狼は呆けていたかと思ったら、「…笑った…」ととても驚いてた。
…そんなに驚くほど笑わなかったのかな、玖楼国では。
私は前の世界では普通に笑ってた。普通の普通の、元気だけが取り得なくらいのフツーな明るい、いや、明るすぎるハイな女の子だった。
でも…だから。そうか、多分、そうだった。
さくらの双子に生まれて、だから、そうしてはいけないと思ってたから。
私はさくらの双子の姉だから。無意識に多分。
「…本当に有難うございました」
「なんの!気にするこたぁない」
地面に足をついても、過保護な小狼に手を引かれて空汰さんと嵐さんの元へと歩いた。
まるでお姫様扱いだと感じたけど、そういえば私は玖楼国では本当にお姫様だったんだとやっと思い出した。
…やっぱり前の世界での一般庶民の感覚から抜け出せなくて、いつもお城の人たちに怒られた。でも私はお姫様扱いなんて望んでいないし一番欲しいのはそんなものじゃない。
小狼は私の手を取りながら、さくらにとても優しい目を向けた。
…人は、外側は平等でも、目も嘘をつけない。だから、そうなんだろう。
これからもずっと。
「…次の世界でも、サクラさんの羽根が見つかりますように」
祈るように優しく瞑目した嵐さん。嵐さんに優しく寄り添う空汰さん。
ここはとても優しい人たちが住まう優しい世界だ。
とても、心地よかった。きっと、この世界を最後に、前に近い世界にはもう来れないだろう。
…後ろ髪を引かれるって、このことだね。でも
私は大切なものを取り戻す。そしてそれだけを頼りに、これからを生きていくんだ。
例え辛くても、苦しくても。
モコナの口に吸い込まれたあと、不思議な空間の中に揺らいでるのに気がついた。
そこには兎様がいて、別れを告げにきてくれたのかと思ったけど、兎様は
「あんさんが、気がついて望まんと…」
そこで、私が口を開こうとした瞬間。
「……また、これ、かぁ……」
私は目を開いた瞬間見慣れない天井を見ていて、
中身を失うというこれは、本当に厄介だと感じてため息を吐いてしまった。
1.阪神共和国
あの後、小狼たちはこの阪神共和国でお世話になったらしい正義くんという人に会いに行った。
私は全然接点が無いし、辛うじて阪神城にぶら下がってる姿を見た程度だ。
だから、「一緒に行きませんか?」と小狼に誘われたけど、嵐さんと空汰さんの下宿屋に留まった。
…小狼、少し寂しそうな顔してた。…やっぱり付き合い長いし、わかるのかな。
「…さん」
「おー、ちゃん、そろそろご飯の時間やで」
「…嵐さん、空汰さん」
小狼たちは正義くんたちとお好み焼きを食べに行っていて、少し羨ましいなぁと腹の虫を鳴らせていれば、嵐さんと空汰さんが湯気の立つお皿の乗ったトレーを持ってきた。
差し出されたそれにはお好み焼きが乗っていて、懐かしいソースの香りに少し視界が歪んだ。
…ああ、帰りたいなぁ。私、あそこに帰りたい。私の居場所だったあそこに帰りたい。
でもそれを私は一度も口にしたことがない。一種の願掛けと、それと…
「小狼、えらい切なそうな顔しとったな」
「……はい。幼馴染、です、から…」
…言葉にしてはいけない。それを口にしてしまえば、望んでしまえば、
色々なものに変化が現れてしまう。例えば他人の行動、例えば他人の言動、例えば天気。例えば表情…例えば
「さんは、怖いんですね」
「……口にしてしまえば…変わって、しまう…私が望めば…」
未来、とか。
だから嫌なの。だから望みたくないの。だから望みを生み出す自分の心が消えてしまえと押さえつけたから、玖楼国ではとても静かに無感情で無表情で、最初は色んな人に心配されたけど。
最終的にはぼんやりだなぁと笑われる程度で済まされて…でもみんな多分、気がついてた。
…外側は変えられてもやっぱり内側は無理だった。内側は、胸のここは、とてもとても大切なところ。
カラダの記憶と心の記憶は、その人の核心。
空汰さんも嵐さんも、小狼たちに一線引いて、関わらないようにしてるのがわかるみたいだ。それが一番の得策だと思った。未来のために。これからのために。彼らのために。全ての、ために。
「そんでも、ちゃんと望まんとあかんで」
「…兎様…」
「あんさんは人間や。人間は内側を押さえつけてしもたら、壊れてまう」
「…でも…私は…」
「誰も特別な人間なんておらん。平等平等。…例え、世界に不平等があったとしてもな。本当は世界はとてもシンプルやで。望みがあるから言葉にする。言葉で、行動で縁が結ばれる。人にとってとても大切なことや」
「……ほんとに、そう、かな…」
「ああ、そうやで!だから胸張って、お仲間たちに言ってやり!」
シュン、っと空気を切るような音がしたと思えば、肩にずっしりとした重み。
もうこの不思議現象にも慣れた。雪の兎のようなつぶらな瞳をした外観、
でもモフモフの兎様。どうやらこれが私の巧断。
この国で私を守ってくれている存在。
少しだけ、心が楽になった。ありがとう、と小さくお礼を言うと、兎様はぴょこりと耳を動かして嬉しそうに返事をしたようだった。
…けど。なんだか少しこの場が静か?
…そうだ、いつも賑やかな空汰さんが無言なんだ。この部屋にちゃんといるのに。
頂いたお好み焼きをもぐもぐと口に含みながらちらりと視線を寄越せば、
空汰さんは何故か下を向いて震えていて、そして…
「な、なんやその巧断ー!!?」
「…ふぁい…?」
「そんな流暢に実体化して喋る巧断そうそういないで!特級か?いや特級っつーより……」
「うしゃぎしゃふぁふぁ…?」
がばりと兎様に飛びつくように顔を上げた空汰さん。が、兎様はぴょこんと跳ねて回避。
お好み焼きがあと一口。よく噛んでからごくりと飲み込んだ。ああ、至福。美味しかったなあ。
空汰さんと追いかけっこになってる兎様を見つめながらお茶を飲んでいれば、兎様はこちらに帰ってきて肩に乗って、言った。
「最後にあんさんが好きなとこ、行ったろ」
「…最、後…?」
「ああ、最後や」
少し寂しそうな目をした兎様は小さく呟いた。
…そうか、さくらの羽根も手に入れて、私の羽根も手に入った。ここに留まる理由はない…
用事は済んで、早く次の世界に行かなくてはならなくて、
…兎様はずっと私の探しものに付き合ってくれて、手伝ってくれて…
「…うん…」
私はふわりと暖かな風に包まれて、気がついたら窓から飛び出して、空へと飛び上がってた。
いつものように足元に小さな羽根が生えて、某メルヒェン魔女っ子のように跳(ジャンプ)するのかと思ったけど…
背中に羽根が生えてる。地面につま先をつけなくてもいい。空に、飛んでる。
…飛(フライ)だ。杖もない、最終形態。
まるで私の望みを具現化したみたいな力だ。戦う力はなくてもいい、ただ…
「…綺麗…だね」
「今日はよく晴れてるなぁ。雲ひとつないしな」
「…空が、…近い…」
「…せやな」
「…私、…わたし…あたし、本当は、空に行きたかったの…空の綺麗な…一番、綺麗な、ところ…でも、多分」
出来ないから。
兎様は返事の代わりに頬に擦り寄ってくれた。巧断も暖かいのだなぁと少しだけ安心感を感じた。
暖かい。生きてるものの感覚。兎様は巧断だ。だけど、とても大きな命の波を感じる。
波打つ波紋はとても大きく広がって、広がって、止まることなく…壮大な
それを感じてやっぱり空汰さんが言っていたように、兎様が自称していたように。
凄い巧断なのかもしれないと思った。街でみかけた巧断よりとても広がりが大きいから。
「…あり、がと…兎様」
「ああ」
「…また、あなたに、逢え、ますか…?」
「あんさんが…が望むのなら」
「…うん…」
ぎゅ、っと空高く、阪神城よりも近いところに浮かびながら兎様を抱きしめた。
暫くそうしてたんだろう。
気がつくと、下の方から「おーいー」と男の人の声が聞えた。
そこにはファイさんがいた。黒鋼さんも視線をこちらにやってる。
小狼ははらはらとした顔でこちらを見てる。…本当に過保護だ。
だから私たちは守られてる。さくらはお転婆だからそんなものに縛られない、自由奔放な、とても綺麗な芯の通った子に育ったけど、私は…
「言ってやり」
兎様の声が聞えた瞬間、私はゆっくりゆっくり降下していった。
兎様の自動運転だ。巧断って多分、人の意思で動かせるものだと思うんだけど…
やっぱりそこは兎様は特別ってことかな
…私になんで、兎様は惹かれたんだろう
いつか逢えたら、また聞いてみたい
「姫!大丈夫ですか…?」
「…小狼、…敬語。あと、…姫じゃ、ない…」
「…はい。…うん。…いきなりあんなに高いところに居るから驚いた」
「…そっか。心配、してくれた、んだね…」
そう言ってみると小狼はとても驚いた顔をしている。
多分、今までそんなこと言わなかったから。
小狼たちの気持ちがわからないから無茶をするのだと思われていたと思う。
でも知ってた。本当にみんなが心配してくれていたこと。
それでも素直になりたくなかった。負い目を感じてた。
けど、兎様は言ってた。
私の、望み
本当の気持ち
「…いつも、…いつも…ありがとう…」
笑った。ありがとう、って言った。私の本当の望みはまだ口にできない。勇気がないから。踏み出せないから。でも、この言葉なら言えるから。
小狼は呆けていたかと思ったら、「…笑った…」ととても驚いてた。
…そんなに驚くほど笑わなかったのかな、玖楼国では。
私は前の世界では普通に笑ってた。普通の普通の、元気だけが取り得なくらいのフツーな明るい、いや、明るすぎるハイな女の子だった。
でも…だから。そうか、多分、そうだった。
さくらの双子に生まれて、だから、そうしてはいけないと思ってたから。
私はさくらの双子の姉だから。無意識に多分。
「…本当に有難うございました」
「なんの!気にするこたぁない」
地面に足をついても、過保護な小狼に手を引かれて空汰さんと嵐さんの元へと歩いた。
まるでお姫様扱いだと感じたけど、そういえば私は玖楼国では本当にお姫様だったんだとやっと思い出した。
…やっぱり前の世界での一般庶民の感覚から抜け出せなくて、いつもお城の人たちに怒られた。でも私はお姫様扱いなんて望んでいないし一番欲しいのはそんなものじゃない。
小狼は私の手を取りながら、さくらにとても優しい目を向けた。
…人は、外側は平等でも、目も嘘をつけない。だから、そうなんだろう。
これからもずっと。
「…次の世界でも、サクラさんの羽根が見つかりますように」
祈るように優しく瞑目した嵐さん。嵐さんに優しく寄り添う空汰さん。
ここはとても優しい人たちが住まう優しい世界だ。
とても、心地よかった。きっと、この世界を最後に、前に近い世界にはもう来れないだろう。
…後ろ髪を引かれるって、このことだね。でも
私は大切なものを取り戻す。そしてそれだけを頼りに、これからを生きていくんだ。
例え辛くても、苦しくても。
モコナの口に吸い込まれたあと、不思議な空間の中に揺らいでるのに気がついた。
そこには兎様がいて、別れを告げにきてくれたのかと思ったけど、兎様は
「あんさんが、気がついて望まんと…」
そこで、私が口を開こうとした瞬間。
「……また、これ、かぁ……」
私は目を開いた瞬間見慣れない天井を見ていて、
中身を失うというこれは、本当に厄介だと感じてため息を吐いてしまった。