独白
5.誰かにとっての願い─？

男は語る。普段はおちゃらけていて笑顔を絶やしたことはなく、弱味や腹のうちなんて欠片も見せなかったはずの男は語る。
それは男の独白。独り言。独り呟く彼の懺悔。

男は弱さを見せない。なんてことない顔をし続けている。これからもずっとそうなのだろうか、と思わせるように、ただ…
──一人の黒髪の少女に関することだけは。そうはいかないようだが。


「失う所だった、損なう所だった、傷付く所だった、消えてしまう所だった、
無くなる所だった見えなくなる所だった手放す所だった遠くなる所だった忘れてしまう所だった手が届かなくなる所だった近くなくなる所だったすぐ傍に居られなくなる所だった感じられなくなる所だった知らなくなる所だった絶やしてしまう所だった冷たくなる所だった小さくなってしまう所だった暖かさが絶えて、消えて、感じられなくて、見えなくて、手が届かなくて、名前さえも、

忘れてしまう所だった──…」


それは誰に向けての懺悔なのか、後悔なのか、弱さの吐き出しなのか、渇いた心の欠片なのか、もう彼からは零れない雫は何処へ行ったのか、

その言葉は何を意味してるのか
彼の内側は。大事な中心が。本当に望んでいることは。恐れていることは？

──そうなのだろう、きっと──なのだろう、だから──で少女はきっと…


「きっと、もう届かない、のか」


──？