眠りの夜の素足が語る
5.誰かにとっての願い─ジェイド国
夜が来た。眠りの夜、
人々が寝静まる夜、眠らなきゃいけない時間、そうしなきゃ生きれなくなってしまう強いられた時間、安らげるはずのモノ。
でも私はとても怖い。恐ろしい。
…──みたくない、ききたくない、しりたくない、かんじたくない…
もしかしたら京も毎晩こんな不安な夜を迎えていたのかもしれない。
もしかしたら、それが日常となって対策を取ることも出来ていたのかもしれない。
でも私は全くそんなこと知らない、感じたこと無い、みたこともない、
だから不安だしとても怖いし、暗闇が怖いなんて子供の時以来だ。ベッドの中がとても怖い。幼い懐かしい思いだ。
…しりとり、しか。結局知らない。こういう時のお守りは。
それも誰かと一緒にしなきゃ成立しないお守りなのに、あーあ、本当に京に聞いておけばよかったって。ホラゲーなんてして楽しんでる場合じゃねーリアルはすぐそこだっ!て過去の私を罵りたい。
「……ッ」
──眠らなきゃ、耐えなきゃ、もし何か来ても、反応しちゃいけない、みても、だめ。
知らないふり、だから目を瞑って、耐える。
朝が来れば、もうそれでいいんだから!
…どのくらいそんな時が経っただろう。
布団を被って何もみえないきこえないようにして。
突然風が入りこんでることが布団の隙間から伝わってきた。…?まさか、窓が開いてたりする…?布団に完全に丸まってるから風が伝わるのが遅かったのかも…と、
窓を閉めるために仕方なく布団を勢いよく取り去る。あれだけ怖がってたくせにあっさりだけどこれでも凄く勇気いったんだから!
でも流石に窓開けっ放しじゃ眠れないし、サクラさんにも迷惑だし、私が開けっ放しにしたかもしれないんだよ。眠る前に降り積もる雪が圧巻で眺めてたときに。だから私の責だし、放っておくわけには…
…それに、本当に怖かったら黒鋼さんのところに行こう。そうすればきっと平気だし!
…常識モラルとしてそれはマズいのはわかってるけど阪神共和国では雑魚寝だったしさー!うん、それがいいそれなら大丈夫だからと起き上がった瞬間のことだった。
「金の髪の姫!?」
「……は…?」
やっぱり、窓は開いてた。それも全開で。眠るサクラさんの身体に障ったら…と思ったのもあるし自分もとても寒いし、
完全にサクラさんは眠りに入ってると思ってたのに。いやベッドに入り込むのも確認したしね、
まだ慣れないようで、ぎこちなく。でも可愛らしく健気に「おやすみなさい」って言ってくれた、だから…
「…………う、うそ……んな馬鹿な……、……て、いうか…ッ」
いや待てぇえーッ!!
まさか、まさかだよ?窓を全開にしてサクラさんが起きていたなんて、そしてそのまま何かを見つけたみたいで、窓枠に大胆に足をかけて。
そのまま外の木を伝って降りて行ってしまうなんてアクティブな事態が一国の姫の身に起こるなんて思うか?そんなことやってのけてみせると予想できるか?
いや出来ないって、ここ二階だよサクラさんー!?
呆然としてしまって暫く放心状態だったけど、やっと我にかえった時にはサクラさんは下へと降りた後で。
私はもう怖くて仕方ないけど、木もあるし雪も降り積もってるし、
大丈夫きっと!と考えて勢いよく飛び降りた。悠長に木もつたってらんない!だってサクラさんを見失ったらどうすんのさっ
雪に残る足跡を追って暫く、住宅が混在する道を曲がったり走ったりくぐったりしてからやっと気が付いたけど…
大きな声で「黒鋼さぁーん!!」って叫んでから来てもよかったんじゃ…あれ…それは…本当に…もう手遅れのことで…
…うわあーんもう裸足だし足冷たいし痛いし凍傷したらどうしよういやしないかな怖いよ冷たいよ真っ暗だよっ
サクラさん何処まで行ったのー!?今時のお姫様事情はどうなってんだーっこんなことしたらお城じゃ大目玉じゃなくってー!?
「…っは、ぁ…ぐ、ぐるじーッ、こ、こっちって、お城の、ほー…ッ?」
吸い込む空気は冷たいし乾燥しまくってるしで、喉が張り付いて痛くてたまらない。
おまけに裸足の足だけじゃなくて一回転んだから全身冷たいよ、し、か、も、追い討ちをかけるように私はパジャマ代わりの制服のワイシャツとスカート生足!!水分吸って張り付いてるわもーいやーっ!
それに、こっちの方向、お城の方向は…
「ど、どこ、行った…ッこ、こっち、なんか…」
──凄く嫌な感じがするのに…
それは前方に見えるお城から?この辺り一帯のこと?肌に張り付くようなものは冷気だけじゃないはず、
なんだか、とても怖い、恐ろしい、不気味だし肌に直接纏わりなんて生ぬるいものじゃない、突き刺さるようなこれは、私は人生でまだ体感したことはなかったけど。これ…
「……チッ、ちょこまかと…ッ」
…人の、気配、完全に隠しきれない、悪意、殺気と呼ばれるもの、前方のお城の方からなんかじゃなく、これは
背後、から……
それを察知した瞬間にはいつか感じたことがあるような頭への衝撃が。
…何か鈍器のようなモノで殴られたんだろう、二度も体験すれば嫌でもわかる、目の前がチカチカするし寒くてたまらないし、殴られた衝撃で意識を失ってしまうには十分なくらい疲労した、でも頭を殴りつける音は嫌な感じはしたけど、流石に骨を砕くような独特な音はしなくて安心したのも束の間。
…首が絞まる、…いや待てよ、首絞められてんのか私、まじですかよ、アブノーマルすぎるってもう意識失いそうだって、そんなことしなくてももうダメージ食らい過ぎて、痛いし、苦しいし、息できないし、
悪意の塊が直に触れすぎて気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、
その手は、
「…"こいつ"にはこれくらいしておかないと、何をしでかすか分かったもんじゃないし…、…ッなっ!」
何を恐れてそこまで私を徹底的に痛めつけているのだろう。
首も絞められた、頭も殴られた、今し方ついに腹に蹴りも入れられた、嫌な音が鈍くこの場に広がる、でも自分の鼓動や吐息や叫びは聞こえなくて、気持ち悪い、頭なんてそんなに強く殴られたらもうどんな障害が残るのやら脳震盪は確実だしもう、
腹に蹴りなんて入れられたら強さと回数によっちゃ内部が、内臓が、てめー女にそれをやるか、なんて考えてても凄く怖いし、怖いし、
私、どうなるか分からないし
薄っすらと感じてた違和感…あ、やっぱりって思ったよ。
だってこの人の──はとても──だったし──だったし──だったけど、
確実に
「……フン、こんな程度のものか」
──?──、?
あ、何かが壊れる音がした。崩壊の音だ。多分私の身体の何かなんだろうなー。なんで私こんなについてないんだろう。あ、弱いからか。なんでこうなるんだろ。
なんでこんなことばっかりかなーもう。そのうち気絶したと思ってたら実はぽっくり死んじゃってたり。…笑えなーい。まあそれはおいといて。
あとはまた目が覚めたときに。目が覚めたのなら。覚められたのなら。また考えれたならば。
5.誰かにとっての願い─ジェイド国
夜が来た。眠りの夜、
人々が寝静まる夜、眠らなきゃいけない時間、そうしなきゃ生きれなくなってしまう強いられた時間、安らげるはずのモノ。
でも私はとても怖い。恐ろしい。
…──みたくない、ききたくない、しりたくない、かんじたくない…
もしかしたら京も毎晩こんな不安な夜を迎えていたのかもしれない。
もしかしたら、それが日常となって対策を取ることも出来ていたのかもしれない。
でも私は全くそんなこと知らない、感じたこと無い、みたこともない、
だから不安だしとても怖いし、暗闇が怖いなんて子供の時以来だ。ベッドの中がとても怖い。幼い懐かしい思いだ。
…しりとり、しか。結局知らない。こういう時のお守りは。
それも誰かと一緒にしなきゃ成立しないお守りなのに、あーあ、本当に京に聞いておけばよかったって。ホラゲーなんてして楽しんでる場合じゃねーリアルはすぐそこだっ!て過去の私を罵りたい。
「……ッ」
──眠らなきゃ、耐えなきゃ、もし何か来ても、反応しちゃいけない、みても、だめ。
知らないふり、だから目を瞑って、耐える。
朝が来れば、もうそれでいいんだから!
…どのくらいそんな時が経っただろう。
布団を被って何もみえないきこえないようにして。
突然風が入りこんでることが布団の隙間から伝わってきた。…?まさか、窓が開いてたりする…?布団に完全に丸まってるから風が伝わるのが遅かったのかも…と、
窓を閉めるために仕方なく布団を勢いよく取り去る。あれだけ怖がってたくせにあっさりだけどこれでも凄く勇気いったんだから!
でも流石に窓開けっ放しじゃ眠れないし、サクラさんにも迷惑だし、私が開けっ放しにしたかもしれないんだよ。眠る前に降り積もる雪が圧巻で眺めてたときに。だから私の責だし、放っておくわけには…
…それに、本当に怖かったら黒鋼さんのところに行こう。そうすればきっと平気だし!
…常識モラルとしてそれはマズいのはわかってるけど阪神共和国では雑魚寝だったしさー!うん、それがいいそれなら大丈夫だからと起き上がった瞬間のことだった。
「金の髪の姫!?」
「……は…?」
やっぱり、窓は開いてた。それも全開で。眠るサクラさんの身体に障ったら…と思ったのもあるし自分もとても寒いし、
完全にサクラさんは眠りに入ってると思ってたのに。いやベッドに入り込むのも確認したしね、
まだ慣れないようで、ぎこちなく。でも可愛らしく健気に「おやすみなさい」って言ってくれた、だから…
「…………う、うそ……んな馬鹿な……、……て、いうか…ッ」
いや待てぇえーッ!!
まさか、まさかだよ?窓を全開にしてサクラさんが起きていたなんて、そしてそのまま何かを見つけたみたいで、窓枠に大胆に足をかけて。
そのまま外の木を伝って降りて行ってしまうなんてアクティブな事態が一国の姫の身に起こるなんて思うか?そんなことやってのけてみせると予想できるか?
いや出来ないって、ここ二階だよサクラさんー!?
呆然としてしまって暫く放心状態だったけど、やっと我にかえった時にはサクラさんは下へと降りた後で。
私はもう怖くて仕方ないけど、木もあるし雪も降り積もってるし、
大丈夫きっと!と考えて勢いよく飛び降りた。悠長に木もつたってらんない!だってサクラさんを見失ったらどうすんのさっ
雪に残る足跡を追って暫く、住宅が混在する道を曲がったり走ったりくぐったりしてからやっと気が付いたけど…
大きな声で「黒鋼さぁーん!!」って叫んでから来てもよかったんじゃ…あれ…それは…本当に…もう手遅れのことで…
…うわあーんもう裸足だし足冷たいし痛いし凍傷したらどうしよういやしないかな怖いよ冷たいよ真っ暗だよっ
サクラさん何処まで行ったのー!?今時のお姫様事情はどうなってんだーっこんなことしたらお城じゃ大目玉じゃなくってー!?
「…っは、ぁ…ぐ、ぐるじーッ、こ、こっちって、お城の、ほー…ッ?」
吸い込む空気は冷たいし乾燥しまくってるしで、喉が張り付いて痛くてたまらない。
おまけに裸足の足だけじゃなくて一回転んだから全身冷たいよ、し、か、も、追い討ちをかけるように私はパジャマ代わりの制服のワイシャツとスカート生足!!水分吸って張り付いてるわもーいやーっ!
それに、こっちの方向、お城の方向は…
「ど、どこ、行った…ッこ、こっち、なんか…」
──凄く嫌な感じがするのに…
それは前方に見えるお城から?この辺り一帯のこと?肌に張り付くようなものは冷気だけじゃないはず、
なんだか、とても怖い、恐ろしい、不気味だし肌に直接纏わりなんて生ぬるいものじゃない、突き刺さるようなこれは、私は人生でまだ体感したことはなかったけど。これ…
「……チッ、ちょこまかと…ッ」
…人の、気配、完全に隠しきれない、悪意、殺気と呼ばれるもの、前方のお城の方からなんかじゃなく、これは
背後、から……
それを察知した瞬間にはいつか感じたことがあるような頭への衝撃が。
…何か鈍器のようなモノで殴られたんだろう、二度も体験すれば嫌でもわかる、目の前がチカチカするし寒くてたまらないし、殴られた衝撃で意識を失ってしまうには十分なくらい疲労した、でも頭を殴りつける音は嫌な感じはしたけど、流石に骨を砕くような独特な音はしなくて安心したのも束の間。
…首が絞まる、…いや待てよ、首絞められてんのか私、まじですかよ、アブノーマルすぎるってもう意識失いそうだって、そんなことしなくてももうダメージ食らい過ぎて、痛いし、苦しいし、息できないし、
悪意の塊が直に触れすぎて気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、
その手は、
「…"こいつ"にはこれくらいしておかないと、何をしでかすか分かったもんじゃないし…、…ッなっ!」
何を恐れてそこまで私を徹底的に痛めつけているのだろう。
首も絞められた、頭も殴られた、今し方ついに腹に蹴りも入れられた、嫌な音が鈍くこの場に広がる、でも自分の鼓動や吐息や叫びは聞こえなくて、気持ち悪い、頭なんてそんなに強く殴られたらもうどんな障害が残るのやら脳震盪は確実だしもう、
腹に蹴りなんて入れられたら強さと回数によっちゃ内部が、内臓が、てめー女にそれをやるか、なんて考えてても凄く怖いし、怖いし、
私、どうなるか分からないし
薄っすらと感じてた違和感…あ、やっぱりって思ったよ。
だってこの人の──はとても──だったし──だったし──だったけど、
確実に
「……フン、こんな程度のものか」
──?──、?
あ、何かが壊れる音がした。崩壊の音だ。多分私の身体の何かなんだろうなー。なんで私こんなについてないんだろう。あ、弱いからか。なんでこうなるんだろ。
なんでこんなことばっかりかなーもう。そのうち気絶したと思ってたら実はぽっくり死んじゃってたり。…笑えなーい。まあそれはおいといて。
あとはまた目が覚めたときに。目が覚めたのなら。覚められたのなら。また考えれたならば。