第十五話
3.仲良しの噂をされる程度の仲良し─それなりに
が最近明らかにおかしい。
幸村がそう気がついたのは、皮肉にも がそういった状態に陥ってから三日も後。
それにはここ三日程、教師からの頼まれ事やら委員の役割やら部活のゴタゴタやらで、朝の時間に植物の水遣りをやるのも精一杯なくらいの忙しさに目まぐるしく動いていたからであり、
普段通りのゆったりとした朝のつかの間の時間をすごしていたならもう少し何か変わったのかもしれないが…
三日、同じ空間にはいたのだけど、やっと久しぶりに顔を合わせた感覚で幸村が彼女を見やると、あまりにもやつれた顔でベンチに横たえる姿が視界に入り彼は若干引いた。
「……どうしたの?」
「……さあ…私にもさっぱり……」
「本当に君はいつも妙な言い回しをするよね」
「…あはは…」
あまり干渉し合わない関係を暗黙の了解で貫いてきた彼ら。しかし流石の幸村も突っ込まずには居られなかった。
化粧品で誤魔化しているようだが目の下には若干隈が出来てるのがわかるし、目が死んでいるし、身体もぐったりと力無く今にも死にそうだし何よりも、朝の生き甲斐であると言っていた本を今日は持っていない。読もうとする気配もない。そもそも鞄の感じからして持ってきているかも分からない。
これでいったいどうして のことをいつも通りだと言えよう。異常だよ…と幸村は の異常な雰囲気にまたしても引く。
──また妙な言い回しで核心に触れないし、これ以上踏み込まない方がいいかな、というより、どうしたの?って聞くだけでも少し踏み込んでしまったかもしれない、
なんて幸村が身を引くことを考えていることを分かっていたのか分かっていなかったのか、その瞬間ぽつりと息を吐くように弱弱しく は口を開いた。
「ねえ、幸村……もしも…だけど…「己の背後にトイレの花子さんや理科室の人体模型が背負わせている」って、言い出した人が居たとしたら、どう思う…?」
その言葉に幸村はまた引きそうになった。何故この女はこんなにやつれた姿でこんな奇天烈なことを聞いてくるのか、もっとやることがあるんじゃないか保健室に行くとか、なんて考えはしたが、 にとってこの質問が今この瞬間に必要なことだったのだろうと考えたくはないがそうんなだろうと認め、
それでも気遣うことなくズバッと言い切った。
「うーん、頭おかしいなって思うかな」
「直球すぎる結構な口に私はびっくりしたよ幸村くん。…私もそう思う…」
──そしてその奇天烈にたとえ話が実際に起こったことだとも知らず、更に、その話の人物は自分にとってとても身近な人物なのだとも知らず、
図らずとも自分の部活仲間を「頭おかしい」と言い切ってしまった幸村を見て は言い様のない遣る瀬無さを感じてまた顔色を悪くしたのだけど、彼は、いや彼らはそんなこと知る由もない。
「………ねえ幸村…」
「………なに?」
「もしも京都の料理の話をしてたら、ついでのように「ああ、そういえば俺の肩に最近妙なものが乗っかっててよ」って恥ずかしそうに、照れ気味に言う人がいたらどう思う?」
そして振り絞ったように再度問いかけたきたそれにも、幸村は。
「何か患ってるんじゃないかなって心配すると思うよ。… 、何か疲れてないかな?」
「……あはは…はは、は……だよ、ね……疲れてるのかもしれない…」
ズバっと言い切った物だから は泣き笑いをするように顔を歪めたのだけど、幸村は怪訝に思ってもそのトイレの花子さんや京都料理の彼と身近な人物で=が結ばれない。
──それは案外彼にとって幸せなことなのかな、いや彼らにとっても、と今度こそベンチにゴロリと行儀悪くうつ伏せになり、突っ伏してしまった彼女を見て、
時間に追われた幸村は若干尾を引かれるものがあったが、「具合悪かったら保健室に行ったほうがいいよ」と言い残し屋上庭園を去る。
…追い討ちをかけたのはあなたなんだけどね…とも言えず、彼女はその後初めて授業をサボタージュした。
勿論、幸村のせいだけではない色んな何かに追いやられて、精神的にも肉体的にも滅入りきって。
その後授業に現れなかった に、朝の姿を見ると にしては珍しいことにサボりかもしかしたら屋上庭園で倒れてるのかもしれない、と思うと一応見に行った方がいいかとも思ったが、
結局ふらりと早退する姿を見かけて思いとどまった。
彼にしては珍しいくらいに誰かを気にかけてるという事実。もう既にあまりにもそれが自然で彼は気付かずにいるらしい。
3.仲良しの噂をされる程度の仲良し─それなりに
が最近明らかにおかしい。
幸村がそう気がついたのは、皮肉にも がそういった状態に陥ってから三日も後。
それにはここ三日程、教師からの頼まれ事やら委員の役割やら部活のゴタゴタやらで、朝の時間に植物の水遣りをやるのも精一杯なくらいの忙しさに目まぐるしく動いていたからであり、
普段通りのゆったりとした朝のつかの間の時間をすごしていたならもう少し何か変わったのかもしれないが…
三日、同じ空間にはいたのだけど、やっと久しぶりに顔を合わせた感覚で幸村が彼女を見やると、あまりにもやつれた顔でベンチに横たえる姿が視界に入り彼は若干引いた。
「……どうしたの?」
「……さあ…私にもさっぱり……」
「本当に君はいつも妙な言い回しをするよね」
「…あはは…」
あまり干渉し合わない関係を暗黙の了解で貫いてきた彼ら。しかし流石の幸村も突っ込まずには居られなかった。
化粧品で誤魔化しているようだが目の下には若干隈が出来てるのがわかるし、目が死んでいるし、身体もぐったりと力無く今にも死にそうだし何よりも、朝の生き甲斐であると言っていた本を今日は持っていない。読もうとする気配もない。そもそも鞄の感じからして持ってきているかも分からない。
これでいったいどうして のことをいつも通りだと言えよう。異常だよ…と幸村は の異常な雰囲気にまたしても引く。
──また妙な言い回しで核心に触れないし、これ以上踏み込まない方がいいかな、というより、どうしたの?って聞くだけでも少し踏み込んでしまったかもしれない、
なんて幸村が身を引くことを考えていることを分かっていたのか分かっていなかったのか、その瞬間ぽつりと息を吐くように弱弱しく は口を開いた。
「ねえ、幸村……もしも…だけど…「己の背後にトイレの花子さんや理科室の人体模型が背負わせている」って、言い出した人が居たとしたら、どう思う…?」
その言葉に幸村はまた引きそうになった。何故この女はこんなにやつれた姿でこんな奇天烈なことを聞いてくるのか、もっとやることがあるんじゃないか保健室に行くとか、なんて考えはしたが、 にとってこの質問が今この瞬間に必要なことだったのだろうと考えたくはないがそうんなだろうと認め、
それでも気遣うことなくズバッと言い切った。
「うーん、頭おかしいなって思うかな」
「直球すぎる結構な口に私はびっくりしたよ幸村くん。…私もそう思う…」
──そしてその奇天烈にたとえ話が実際に起こったことだとも知らず、更に、その話の人物は自分にとってとても身近な人物なのだとも知らず、
図らずとも自分の部活仲間を「頭おかしい」と言い切ってしまった幸村を見て は言い様のない遣る瀬無さを感じてまた顔色を悪くしたのだけど、彼は、いや彼らはそんなこと知る由もない。
「………ねえ幸村…」
「………なに?」
「もしも京都の料理の話をしてたら、ついでのように「ああ、そういえば俺の肩に最近妙なものが乗っかっててよ」って恥ずかしそうに、照れ気味に言う人がいたらどう思う?」
そして振り絞ったように再度問いかけたきたそれにも、幸村は。
「何か患ってるんじゃないかなって心配すると思うよ。… 、何か疲れてないかな?」
「……あはは…はは、は……だよ、ね……疲れてるのかもしれない…」
ズバっと言い切った物だから は泣き笑いをするように顔を歪めたのだけど、幸村は怪訝に思ってもそのトイレの花子さんや京都料理の彼と身近な人物で=が結ばれない。
──それは案外彼にとって幸せなことなのかな、いや彼らにとっても、と今度こそベンチにゴロリと行儀悪くうつ伏せになり、突っ伏してしまった彼女を見て、
時間に追われた幸村は若干尾を引かれるものがあったが、「具合悪かったら保健室に行ったほうがいいよ」と言い残し屋上庭園を去る。
…追い討ちをかけたのはあなたなんだけどね…とも言えず、彼女はその後初めて授業をサボタージュした。
勿論、幸村のせいだけではない色んな何かに追いやられて、精神的にも肉体的にも滅入りきって。
その後授業に現れなかった に、朝の姿を見ると にしては珍しいことにサボりかもしかしたら屋上庭園で倒れてるのかもしれない、と思うと一応見に行った方がいいかとも思ったが、
結局ふらりと早退する姿を見かけて思いとどまった。
彼にしては珍しいくらいに誰かを気にかけてるという事実。もう既にあまりにもそれが自然で彼は気付かずにいるらしい。