買い物と変化の兆しと三人で
3.変わり行く日常と来襲
人、人、人である。
ここは人がゴミのようにいる。
進んで来たくなる場所ではないけど、何故こんな所に来たのかと言えば。
…私の両腕に抱きついてる双子ちゃんの服を見繕いに来たんだけど…
凄く痛い!人ごみに二人とも恐縮しきっちゃってて、私にしがみついてる。
ここは都会にも負けず劣らずのショッピングモールなのだけど、「都会は怖いねぇえ…」とリンちゃんが言う。
どこの田舎っ子だと突っ込みをしたくなるけど、
レンはと言えばいつもと変わらない表情ながらに固まってしまっている。
そう言えば初めてのお出かけなんだけど、初・がこれってちょっと酷だったかな…と思ったので、
お店でチョコバナナとミカン飴を買ってご機嫌取りをしてから、
服屋さんが集合している階へと上がる。本当に私でさえ迷子になりそうだ、ここ。
「ここのお店とかどう?ここは可愛い系で、その隣がカジュアルな感じかなー」
いやー、ほんと、リンちゃん凄く可愛いから迷っちゃう。
ロリロリに可愛い服を着せてみたいし、カジュアルに今時の女の子して欲しくもある。
ここまで素材がいいと着せ替え人形にしてしまいたくなるわ…。
どうにもあちこちに色んな系統の店が隣り合ってるから、目移りしてしまう。
リンちゃんもかわいーかわいー!とは言ってるけど目移りしてるみたい。
どうしようかと迷っていると、
レンが私たちの服を引っ張って、「あっち」と指差した。そこはカジュアルすぎることもなく、乙女すぎることもなく、
絶妙な可愛さ、乙女らしさを演出するような、淡い感じの店だった。
店内に足を踏み入れると、店員のお姉さんが営業スマイルを振りまいてくる。そんなことも気にも留めず、二人は服を漁っていた。
「これと、これと、これ」
「あっリンそっちの色違いがいいー」
「じゃあ、これにこのスカート」
「リンのサイズどれぇー?」
「これ。いい加減自分のものくらい忘れないでよね」
す、凄い。リンちゃんに似合う服の系統やサイズを全て把握している…。これが双子パワー…?
上から下まで、頭からつま先まで全て見繕ってくれている。手当たり次第にやってるから、ポイポイと服が山のように積み重なる。
流石に全て買いきれないから厳選しなきゃなぁ…と思いつつも、優柔不断に迷っていた私より、レンの方がよっぽどセンスがある。
…その間に私も店内をぐるっと、
二人から目を離さない範囲内で回ってみようかなあ、と考えて、あれも可愛いこれも可愛いしているうちに二人が帰ってきて。
「早っていうか少なくなったね…?」
「レンは財布握ってるお母さんだから…」
少しばかりしゅん、としているリンちゃんがおかしくてぷっと笑ってしまった。
お金の勘定と必要なものの見極めが出来るなんて、本当に偉い。ぽんぽん、とレンの頭を撫でてやると少し嬉しそうにしてる。
「レンは買い物上手だね」
「言ったでしょーっレンはリンの買い物凄いんだからっ」
ああ、あれはそういうことなのか…
いやいったい何のことなのかってあの時は思ってたんだけど、確かに凄い。
お会計を済ませると、それでも結構な量だったのか、レジでおまけをもらった。私も私で別会計したから二つネックレスをもらって、
それをリンちゃんとレンの首に下げてやった。
「ん、二人とも似合ってる」
星のネックレスと月のネックレス。小さなチャームがついてるだけだから、
勿論女の子も似合うけど、レンにもいいかと思った。
隣り合わせの月と星がなんとなく気に入ってる。
帰りは何か食べて帰ろうかなあ、でもカイトと隣人さん今か今かと待ってるだろうしなあ…
そんなこと考えながらまずリンちゃんの手を繋ごうとすると、
リンちゃんはぎゅっと抱きついてきた。
「ありがとう、」
そして上げた顔が、穏やかで、とても嬉しそうだったから。
…店のおまけをあげただけなんだけど、凄く良いものとは言えないけど。
私も嬉しいや。
抱きつかれたまま、ぼーっと立ってるレンにこいこいと手で招いてみると、
とことこと歩み寄ってきて。
「…ッ二人ともだいすきだー!」
二人をぎゅっと抱きしめた。暖かくて、優しくて、誰かのために、何かのために。
一生懸命で一途なこの子たちが大好きだ。長い時を過ごしたわけじゃないけど、こんなにも愛しく感じてきてる。
すると、今日は口数が少なかったレンが、ぱくりと口を開いた。
「……ずるい」
拗ねたようなその顔が、とても可愛くて笑ってしまった。
「よし、これからスーパーにいきまーす!」
***
野菜、野菜、果物、シチューのルー用の材料、お肉は控えめ、身体に優しそうなもの。ゼラチンとジュース、ミキサーはうちにある。
あとは柔らかいパンも。その他各種。
スーパーから帰る頃には荷物でいっぱいになっちゃって、どうしようかと思っていると、軽々と双子たちが持ち上げて歩いていって、
悪い申し訳ないとか言う前に、本当に重さを感じていないみたいで、
どうしようかと思った。私、あれでいつも締め上げられてるんだよな…レンも同じく。
レンは強く締め上げたりしないしゆったりしてるから、滅多にそういうことはないけど。
スーパーから家は近く、夕暮れの住宅街を歩き、帰宅。とりあえずリンちゃんにはシェアハウスの方に入ってもらう。
「さて…これから…」
「これから…?」
「なになにー?」
実験を始めます
そういうとレンは不可解そうな顔を、リンちゃんはきょとん、とした顔をしていた。
3.変わり行く日常と来襲
人、人、人である。
ここは人がゴミのようにいる。
進んで来たくなる場所ではないけど、何故こんな所に来たのかと言えば。
…私の両腕に抱きついてる双子ちゃんの服を見繕いに来たんだけど…
凄く痛い!人ごみに二人とも恐縮しきっちゃってて、私にしがみついてる。
ここは都会にも負けず劣らずのショッピングモールなのだけど、「都会は怖いねぇえ…」とリンちゃんが言う。
どこの田舎っ子だと突っ込みをしたくなるけど、
レンはと言えばいつもと変わらない表情ながらに固まってしまっている。
そう言えば初めてのお出かけなんだけど、初・がこれってちょっと酷だったかな…と思ったので、
お店でチョコバナナとミカン飴を買ってご機嫌取りをしてから、
服屋さんが集合している階へと上がる。本当に私でさえ迷子になりそうだ、ここ。
「ここのお店とかどう?ここは可愛い系で、その隣がカジュアルな感じかなー」
いやー、ほんと、リンちゃん凄く可愛いから迷っちゃう。
ロリロリに可愛い服を着せてみたいし、カジュアルに今時の女の子して欲しくもある。
ここまで素材がいいと着せ替え人形にしてしまいたくなるわ…。
どうにもあちこちに色んな系統の店が隣り合ってるから、目移りしてしまう。
リンちゃんもかわいーかわいー!とは言ってるけど目移りしてるみたい。
どうしようかと迷っていると、
レンが私たちの服を引っ張って、「あっち」と指差した。そこはカジュアルすぎることもなく、乙女すぎることもなく、
絶妙な可愛さ、乙女らしさを演出するような、淡い感じの店だった。
店内に足を踏み入れると、店員のお姉さんが営業スマイルを振りまいてくる。そんなことも気にも留めず、二人は服を漁っていた。
「これと、これと、これ」
「あっリンそっちの色違いがいいー」
「じゃあ、これにこのスカート」
「リンのサイズどれぇー?」
「これ。いい加減自分のものくらい忘れないでよね」
す、凄い。リンちゃんに似合う服の系統やサイズを全て把握している…。これが双子パワー…?
上から下まで、頭からつま先まで全て見繕ってくれている。手当たり次第にやってるから、ポイポイと服が山のように積み重なる。
流石に全て買いきれないから厳選しなきゃなぁ…と思いつつも、優柔不断に迷っていた私より、レンの方がよっぽどセンスがある。
…その間に私も店内をぐるっと、
二人から目を離さない範囲内で回ってみようかなあ、と考えて、あれも可愛いこれも可愛いしているうちに二人が帰ってきて。
「早っていうか少なくなったね…?」
「レンは財布握ってるお母さんだから…」
少しばかりしゅん、としているリンちゃんがおかしくてぷっと笑ってしまった。
お金の勘定と必要なものの見極めが出来るなんて、本当に偉い。ぽんぽん、とレンの頭を撫でてやると少し嬉しそうにしてる。
「レンは買い物上手だね」
「言ったでしょーっレンはリンの買い物凄いんだからっ」
ああ、あれはそういうことなのか…
いやいったい何のことなのかってあの時は思ってたんだけど、確かに凄い。
お会計を済ませると、それでも結構な量だったのか、レジでおまけをもらった。私も私で別会計したから二つネックレスをもらって、
それをリンちゃんとレンの首に下げてやった。
「ん、二人とも似合ってる」
星のネックレスと月のネックレス。小さなチャームがついてるだけだから、
勿論女の子も似合うけど、レンにもいいかと思った。
隣り合わせの月と星がなんとなく気に入ってる。
帰りは何か食べて帰ろうかなあ、でもカイトと隣人さん今か今かと待ってるだろうしなあ…
そんなこと考えながらまずリンちゃんの手を繋ごうとすると、
リンちゃんはぎゅっと抱きついてきた。
「ありがとう、」
そして上げた顔が、穏やかで、とても嬉しそうだったから。
…店のおまけをあげただけなんだけど、凄く良いものとは言えないけど。
私も嬉しいや。
抱きつかれたまま、ぼーっと立ってるレンにこいこいと手で招いてみると、
とことこと歩み寄ってきて。
「…ッ二人ともだいすきだー!」
二人をぎゅっと抱きしめた。暖かくて、優しくて、誰かのために、何かのために。
一生懸命で一途なこの子たちが大好きだ。長い時を過ごしたわけじゃないけど、こんなにも愛しく感じてきてる。
すると、今日は口数が少なかったレンが、ぱくりと口を開いた。
「……ずるい」
拗ねたようなその顔が、とても可愛くて笑ってしまった。
「よし、これからスーパーにいきまーす!」
***
野菜、野菜、果物、シチューのルー用の材料、お肉は控えめ、身体に優しそうなもの。ゼラチンとジュース、ミキサーはうちにある。
あとは柔らかいパンも。その他各種。
スーパーから帰る頃には荷物でいっぱいになっちゃって、どうしようかと思っていると、軽々と双子たちが持ち上げて歩いていって、
悪い申し訳ないとか言う前に、本当に重さを感じていないみたいで、
どうしようかと思った。私、あれでいつも締め上げられてるんだよな…レンも同じく。
レンは強く締め上げたりしないしゆったりしてるから、滅多にそういうことはないけど。
スーパーから家は近く、夕暮れの住宅街を歩き、帰宅。とりあえずリンちゃんにはシェアハウスの方に入ってもらう。
「さて…これから…」
「これから…?」
「なになにー?」
実験を始めます
そういうとレンは不可解そうな顔を、リンちゃんはきょとん、とした顔をしていた。