理由の理由に不憫な思惑
2.初めてのお留守番の変化の出会い
その次の日も、
は臨時で応援を頼まれたらしく、歌の先生をしに仕事へ行っていた。
また俺とレンに平謝りしながら留守番を頼んでいたけど、レンはともかく、俺自身はマスターも殆ど不在だし、暇を持て余してることも多いし、
迷惑ではない。
でも、レンはどう思ってるかな。昨日ちゃんと帰ってきたとき、ホッとしたりしたんだろうか。
…少なくとも俺は、今のマスターに初めて留守番を頼まれたとき、ちゃんとマスターが帰ってきたとき、嬉しくて、嬉しくて、悲しくて仕方なかった。
不安になってしまったこと、疑ってしまったこと。
"でも、次は?"と思ってしまったこと。全部が悲しくて嬉しくてたまらなかったんだ。
「なんで、レンはそんな口調になったの?」
「なんで、って…」
「ほら、他の鏡音レンって存在は、…"カイト"にしても性格に個体差は出る。それにしても俺が知る"レン"よりは、結構さ…」
そんなことを考えながら、永遠とホットミルクを飲み続けるレンに問いかけてみた。
なんでも初めて口にした物がホットミルクで、お気に召したとかどうとか。
可愛い所もあるくせに、口調がなんとも生意気なんだよなぁ。それも魅力の一つなんだろうけど、不快には思わないし。
でも、俺が見てきた鏡音レンたちは、天真爛漫というか、結構やんちゃないたずらっ子、或いはマセてる少年っていう感じだったんだよね…。個体差ってあるけど、なんでだろう。
話は尽きないけど、ふと掘り下げてみたくなった。そんな俺に、レンは言う。
「…だって、マスターの家にある漫画の男が…こんな口調だった」
「まっ漫画がバイブルだったんだね…でも、なんでそのキャラをピンポイントでお手本に?」
「…マスターが、好きだから。」
「え、そのキャラを!?」
別に悪いという訳ではないんだよ。
最初も言ったけど、ちゃんと魅力的だ。
だけど何だかの好みを思いもよらぬ形で知ってしまって最高に気まずい。そしてそれを知ったレンが口調を真似てると知ってしまうと更に気まずい。
…、本を読んでレンが進化したって言ってたけど、
ちゃんと漫画管理して。凄い読まれてるよ。すっごいのこと観察してる。
「そのキャラが出てる単行本だけ、結構読み古されてたりしてたし、少しだけグッズってやつもあった」なんて言ってるけどこの子。
…純粋さが盾になって、頭が切れるとかいう俺以上にやり辛い感じになってない…!ひぃい言いようのない羞恥心がっ
「最初は目に付いたこの口調をテンプレートにしてるだけだった。でも、マスターが好きって知ったから、これに決めた」
「…レン…」
それって、まだハッキリ自覚はないみたいだけど、マスターに、に好かれるために、ってことでしょ?
本当に自分自身が好かれたいのなら、誰かのお手本通りに口調を作るのは、頷けるものではないと思う。
でも、レンが、このレンが、誰かに好かれたいと、誰かを好いてると、愛し愛されてるのだと思うと、胸がぐわっとざわついて、
締め付けられた。
…俺も、悲しくて、嬉しくて、辛くて、幸せな気分だ。レンも、同じように一喜一憂しているといい。今そう思えなくても、いずれそうなればいい。
きっとなれる。でも。
「こうすると、マスター、俺に逆らえなくなるんだ」
「……レン、もしかして不満があったりする?下克上しようとか思ってる……?」
「全然。マスターはマスターで、俺は俺だよ、ずっと。でも、俺がこうしてると、マスターが…面白い?かわいい?から」
「…ああぁあ…」
完全に天然の無自覚、いやある意味意図的なタラシに育ってしまった…
面白いと可愛いの違いを測りかねてるみたいだけど、きっとそのうち、俺のマスター可愛いとか思っちゃうんだろう。
俺が自分のマスターが格好いいって思うように。マスター自慢なら負けないけどねっ
…でもこれはもう、俺のせいでもなくなまえのせいでもなくレンのせいでもなく。
やり場のない気持ちは、その漫画の作者にぶつけるしかないのだろう。苦情を送ったとして、完全にとばっちりのいちゃもんだけど。
…そうだなぁ
「ねぇ、レン。、明日からはちゃんとお休みだって」
「……仕事、ね」
「胡散臭そうな目しなくても、ちゃんと働いてるよあれでも。有能だよ。…だからさぁ」
「?だから?」
「曲作ってーって、おねだりしてみたら?」
「……カイト…」
俺をじとりと見たレンは、呆れたように俺の名を呼んでから、言った。
「音感も才能もセンスも技量も歌唱力も何もないマスターに、本当に曲が作れると思ってるの?」
「……どうしてこんなに毒舌になっちゃったんだろうねぇ……作れるよ、多分ね…」
「多分じゃん。それに、…俺は歌えない。人のこと言えないくらいには、センスないから」
わかってるでしょ、なんて釘を刺すレンに、「晩御飯の時にでも、それとなく聞いてみたら喜ぶよ」と念を押してみれば、
レンは凄く不満げだった。あまり表情に違いは生まれないけど、
その雰囲気でなんとなく察せるものだなぁ、と茶を啜れば、迎えのインターホンの連打攻撃が聞えて、
まるである種の夕方のよい子が帰る時間のチャイムと化していると思った。
2.初めてのお留守番の変化の出会い
その次の日も、
は臨時で応援を頼まれたらしく、歌の先生をしに仕事へ行っていた。
また俺とレンに平謝りしながら留守番を頼んでいたけど、レンはともかく、俺自身はマスターも殆ど不在だし、暇を持て余してることも多いし、
迷惑ではない。
でも、レンはどう思ってるかな。昨日ちゃんと帰ってきたとき、ホッとしたりしたんだろうか。
…少なくとも俺は、今のマスターに初めて留守番を頼まれたとき、ちゃんとマスターが帰ってきたとき、嬉しくて、嬉しくて、悲しくて仕方なかった。
不安になってしまったこと、疑ってしまったこと。
"でも、次は?"と思ってしまったこと。全部が悲しくて嬉しくてたまらなかったんだ。
「なんで、レンはそんな口調になったの?」
「なんで、って…」
「ほら、他の鏡音レンって存在は、…"カイト"にしても性格に個体差は出る。それにしても俺が知る"レン"よりは、結構さ…」
そんなことを考えながら、永遠とホットミルクを飲み続けるレンに問いかけてみた。
なんでも初めて口にした物がホットミルクで、お気に召したとかどうとか。
可愛い所もあるくせに、口調がなんとも生意気なんだよなぁ。それも魅力の一つなんだろうけど、不快には思わないし。
でも、俺が見てきた鏡音レンたちは、天真爛漫というか、結構やんちゃないたずらっ子、或いはマセてる少年っていう感じだったんだよね…。個体差ってあるけど、なんでだろう。
話は尽きないけど、ふと掘り下げてみたくなった。そんな俺に、レンは言う。
「…だって、マスターの家にある漫画の男が…こんな口調だった」
「まっ漫画がバイブルだったんだね…でも、なんでそのキャラをピンポイントでお手本に?」
「…マスターが、好きだから。」
「え、そのキャラを!?」
別に悪いという訳ではないんだよ。
最初も言ったけど、ちゃんと魅力的だ。
だけど何だかの好みを思いもよらぬ形で知ってしまって最高に気まずい。そしてそれを知ったレンが口調を真似てると知ってしまうと更に気まずい。
…、本を読んでレンが進化したって言ってたけど、
ちゃんと漫画管理して。凄い読まれてるよ。すっごいのこと観察してる。
「そのキャラが出てる単行本だけ、結構読み古されてたりしてたし、少しだけグッズってやつもあった」なんて言ってるけどこの子。
…純粋さが盾になって、頭が切れるとかいう俺以上にやり辛い感じになってない…!ひぃい言いようのない羞恥心がっ
「最初は目に付いたこの口調をテンプレートにしてるだけだった。でも、マスターが好きって知ったから、これに決めた」
「…レン…」
それって、まだハッキリ自覚はないみたいだけど、マスターに、に好かれるために、ってことでしょ?
本当に自分自身が好かれたいのなら、誰かのお手本通りに口調を作るのは、頷けるものではないと思う。
でも、レンが、このレンが、誰かに好かれたいと、誰かを好いてると、愛し愛されてるのだと思うと、胸がぐわっとざわついて、
締め付けられた。
…俺も、悲しくて、嬉しくて、辛くて、幸せな気分だ。レンも、同じように一喜一憂しているといい。今そう思えなくても、いずれそうなればいい。
きっとなれる。でも。
「こうすると、マスター、俺に逆らえなくなるんだ」
「……レン、もしかして不満があったりする?下克上しようとか思ってる……?」
「全然。マスターはマスターで、俺は俺だよ、ずっと。でも、俺がこうしてると、マスターが…面白い?かわいい?から」
「…ああぁあ…」
完全に天然の無自覚、いやある意味意図的なタラシに育ってしまった…
面白いと可愛いの違いを測りかねてるみたいだけど、きっとそのうち、俺のマスター可愛いとか思っちゃうんだろう。
俺が自分のマスターが格好いいって思うように。マスター自慢なら負けないけどねっ
…でもこれはもう、俺のせいでもなくなまえのせいでもなくレンのせいでもなく。
やり場のない気持ちは、その漫画の作者にぶつけるしかないのだろう。苦情を送ったとして、完全にとばっちりのいちゃもんだけど。
…そうだなぁ
「ねぇ、レン。、明日からはちゃんとお休みだって」
「……仕事、ね」
「胡散臭そうな目しなくても、ちゃんと働いてるよあれでも。有能だよ。…だからさぁ」
「?だから?」
「曲作ってーって、おねだりしてみたら?」
「……カイト…」
俺をじとりと見たレンは、呆れたように俺の名を呼んでから、言った。
「音感も才能もセンスも技量も歌唱力も何もないマスターに、本当に曲が作れると思ってるの?」
「……どうしてこんなに毒舌になっちゃったんだろうねぇ……作れるよ、多分ね…」
「多分じゃん。それに、…俺は歌えない。人のこと言えないくらいには、センスないから」
わかってるでしょ、なんて釘を刺すレンに、「晩御飯の時にでも、それとなく聞いてみたら喜ぶよ」と念を押してみれば、
レンは凄く不満げだった。あまり表情に違いは生まれないけど、
その雰囲気でなんとなく察せるものだなぁ、と茶を啜れば、迎えのインターホンの連打攻撃が聞えて、
まるである種の夕方のよい子が帰る時間のチャイムと化していると思った。